あらすじ ――地底。忌み嫌われし者たちの集まる、地上とは異なる文化を歩む場所。その中で、地底のものにすら疎まれる異端の存在。心を読む者。 それが古明地さとり、旧地獄を管理する地霊殿の主である。 そんな彼女の元に、地上から一通の手紙が送られてきた。 彼女にそれを届けたのはお燐(本名は火焔猫燐だが、本人はその名を嫌う。) 簡単に言えばさとりのペットである。 お燐は、地上にある博麗神社を訪れた際に、その手紙を受け取ったという。 なぜお燐が地上に出向くことができたかといえば、地底と地上は、 この前の一件以来、少しずつだが交流が行われるようになったからだ。 「地上の者が……私に?」 さとりは訝しげに手紙の差出人の名を眺めながら考える。 この私に手紙を差し出してくるだなんて、何事だろうか。 この前の人間のように、無茶苦茶な用件であったら願い下げだが。 「差出人は……。上白沢、慧音?」 書かれた名前を読みながら、白黒の魔法使いはまともな人間だったな、と思い返す。 ――はじめに永遠亭の薬師、八意永琳のところに向かった。 恐らく"彼女"は怒るだろうが、それもこの状況とあってはやむなしだ。 結果としては、それは徒労に終わった。 八意永琳が言うには、外的な要因は何もない、とのことだ。 よくよく考えれば当然だ、彼女の体が傷つくことがあるはずもない。 次に守矢神社の巫女、東風谷早苗の元に向かった。 里で早苗と話した際に耳にした、無意識を操る少女の話、 正確に言えばその少女の姉、古明地さとりの話を思い出したからだ。 外傷によるものでなければ、考えられる原因は精神的なものだけだ。 "彼女"の心に何らかの異変が起こったことは間違いないだろう。 早苗から詳しい話を聞いたところ、さとりのペットが博麗神社に出入りしているらしい。 そして博麗神社でさとりのペット、お燐にさとり宛の手紙を渡した。 そして今、目の前で目を瞑ったまま動かない"彼女"を前にひたすらに願う。 「頼む、目を覚ましてくれ……。妹紅……!」 ――ここはどこだろう。 真っ暗だ。文字通りに真っ暗。 何も見えない。周りはおろか自分すら、だ。 分かるのは、自分の下には地面があること。 「戻らなくちゃ……。」 どこへ?そう思わずにはいられなかったが、あまり考えないようにして、 彼女は暗闇の中を歩き始める。 |